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「今年の研修生に女の子いないもの」
その言葉を聞いた途端、目を見開いて部屋を飛び出していったルヴァに、オルフィレーネは首をかしげた。
タブレットを取り出しデータベースから警察部を含む研修生の名簿を開く。
が、ルーナの名前はない。
「やっぱりいないじゃない」
何かの間違いだろうとタブレットをしまいかけて、もう一度画面を見つめた。
そして、研修生が入ってきた二週間前の入局者名簿を開き、ルーナの名前を探した。
「…あった」
そこには確かに、ルーナ・ギルスの名があり、しかもプロフィールは『科学部研修生』となっている。
研修生の名簿に乗っている人数は学校から通知された人数と一致していた。
もしもルーナが研修生であるなら名簿にないはずはないし、変更があれば伝えてくるはずだ。
「何これ、不法侵入者ってこと?」
オルフィレーネはそう呟いて連絡先リストを開き、ヴィルセットを呼び出した。
2、3度のコールの後ヴィルセットが答えた。
「なんだ?」
「今年の研修生、36人でいいのよね?」
「ああ。変更も聞いていないが」
じゃあやっぱり、と珍しく深刻な様子で呟いたオルフィレーネに、ヴィルセットが不審そうにどういうことだ、と問いかけた。
「一人、得体の知れないやつが入り込んでるみたいよ?」
「なに?」
オルフィレーネは今までの状況を説明し、最後に付け加えた。
「あれだけルヴァが慌てたってことは…」
「リノに接触している、ということか」
2人がため息をつく。
少しの沈黙のあと、ヴィルセットが口を開いた。
「ルヴァに連絡してみるか…。
お前はリノを探してくれ」
「はいはい」
そうして同時に通信を切断した。


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