湖月譚

重なる光 きみを飾って
揺らめいた 水面の明かり
冷たい雨を拭った指で
一つ一つ、なぞって

崩れてく光彩の影に
変わらぬきみだけが残る
溢れ出す涙は染み込み
静かに消えてゆく

伸ばしても届かない
君の隣
暗くて深い闇のようで
届いても意味のない
鏡の君
それでもいい、構わないから
抱き締めて…


重なる孤影 きみを隠して
広がった波紋の中に
移ろう花をそっと浮かべて
ゆらりゆらり、流れる

動き出す花影の軌跡に
静かなきみさえも揺れる
紡ぎ出す言葉は静かに
湖底へ沈みゆく

願っても叶わない
君との日々
言葉にさえもできなくて
望んでも動けない
弱い私
胸の中 想いを照らす
月明かり


伸ばしても届かない
君の隣
暗くて深い闇のようで
届いても意味のない
鏡の君
そう、それは
触れられぬ月(きみ)の姿(かたち)

望むほど遠くなる
君の姿
寂しい月夜 一人きり
隠すほど強くなる
この想いが
報われず消えゆく前に
抱き締めて…


月の光の下、届くことのないわたしの想いは
どこへゆくのでしょう

「きみ」は月、「君」は愛しい人を示します。  
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